PLLを理解したい(位相雑音etc)その1

前回、PLLを使った10MHz標準発振器を試作しました。

斉藤OMのお陰を持ちまして、うまく動作しました。

ここでは、PLLを理解するための前哨戦として、用語を理解していきます。

1.位相雑音

MATH

ある発振器の波形を、スペアナで観測すると、上図のように見えました。

これは、スペアナの解像度が、今は9KHzのバンドパスフィルタを使っているからです。

もっと解像度の高い、100Hz、30Hz等のバンドパスフィルタを通すと、一本の線が垂直に立ったように見えるはずです。

理想の発振器は、線になったスペクトルを持ったものを言います。

MATH

右側が実際の発振器のスペクトルです。(絵が汚いので、すいません。)

「RF領域において、位相雑音は通常、周波数領域で扱われる。

$\omega \U{ff43} $で発振する理想的な正弦波発振器のスペクトルは インパルスで示されるのに対し、

現実的な発振器のスペクトルは搬送波周波数の両端に広がるスカート特性を持つ。」

と言うことだそうです。

 

 

(引用 「RFマイクロエレクトロニクス Behzad Razavi著 黒田監訳」p.236

数式が難しい本だけど、大きな視点から書かれていて、概略をつかみやすい。

「数式に負けるな !!! 」と、自分に言い聞かせる訳です。

訳本でありがたいし、原著より安価なのが、うれしい

右側の現実の発振器において、赤い帯の周波数の幅を、今、仮に1KHzとすると、

この帯域内の雑音電力と、搬送波の電力の比でもって、位相雑音を定量化することができます。

この帯域(今は、1KHzと仮定)での雑音を、-70dBm、中心周波数$\omega \U{ff43} $からのオフセットを100KHz

搬送波の電力を、仮に-2dBmとすると、

1KHzの帯域で-70dBmですから

1Hz当たりに換算すると

-70dBm / 1000 -70dBm 30dB =-100dB/Hz

(dBmの定義は10logX ですから、1/1000は-30dBm、1/100は-20dBm)

 

そして、搬送波は -2dBm の大きさなのですから

雑音は、搬送波と比較して

(-100dBm) - (-2dBm) =-98dB

の差があります。

この時、搬送波と比較しましたから

-98dBc/Hz

と、表現されます。(そうやったんか!!! 実は今まで知りませんでした。)

-98dBc/Hz @100KHzと表現されるか、どうかは解りません。

 

2.実際の発振器(10MHz標準発振器)は、どうやったんかMATH

左側が試作した10MHz発振器です(200KHz span)

右側は、もっと、下のほうをみたものです。(100KHz span)

左側より、

搬送波は +20dBm

右側より  搬送波からのオフセット10KHzで

位相雑音は -90dBm/100Hz -90dBm - 20dB =-110dBm/Hz

 

ですから

位相雑音は、搬送波との距離が

-110dBm −(+20dBm) = -130dBc/Hz @10KHz

 

 

となりました。

 

前回書きましたように、散々いじった試作機ですから、

途中から空中配線になってしまったのですが(つまり、作り始めた時、PLLのことを全く知らなかった訳です。)

まあまあの値でしょうか?

 

全て、10MHz高精度水晶発振器(¥300@秋月)の、お陰です。

(Qが高いと、位相雑音は少ない)

MATH

恥ずかしながら、空中配線の程度を、お見せします。

3.ジッタはどうなのか

ジッタとは、時間軸での、波形のゆらぎと思われます。

MATH

全く動かないので、ジッタは、ないと思ってよろしいのでしょうか?

(VCOの出力を、HC00のNANDを、一つ通して無負荷で見たものです。)

とにかく、PLLの実力を実感しましたので、

もう少し、PLLを調べてみたいです。

H15.04.07

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