続 PLLを理解したい その5

1.4 VCOのゲイン K$_{VCO}\quad $及び MATH

K$_{VCO}\quad ,$これは、1Vあたり、どれ位の周波数が変化するかを示します。

10MHz Xtalモジュール(¥300 @秋月)を実測いたしました所

6.05V 1.71Vの電源電圧の変化で

10.000 075 〜9.999 957 MHZ の変動がありました。

よって、

MATH Hz / V

  

〔実装したまま、計測しましたので、不正確かも知れません〕

  

ですので

 

MATH rad / V

となりました。

MATHについて

位相比較器では、文字通り、位相を比較いたします。

よって、ループで、もどしてやる時

角速度(MATHを、位相に変換しなければなりません。

「56.PLLを理解したい(10MHz標準発振器の場合)その3」1.1で書きましたように

「周波数を積分すると、位相が求まる」

となります。

それを実行すると、1/s と言う項目 が出てきます。

「19. 3cosωt + 4sinωtはどんな波形?」で、書きましたが、

「積分とは、$\U{ff4a} \omega $で割る」

と、言うことです。

これは、ラプラスのs (s=MATHで、 MATH の場合に他なりません。

あるいは、

正弦波 MATH 複素表示すると

MATH

でしたから

$\qquad $

MATH

MATH

となり、

積分することは、元の正弦波を MATHで割るとよい事がわかります。

実体は、掴めていないんですが、計算では、そうなります。

それから、ループで帰還をかける時に

N分周しますから

位相もMATH になります。

そんな訳で、

VCOの位相は、分周比Nも含めると

MATH

と、なります。

以上で、PLLを構成する要素の、各オープンループゲインが求まりました。

2.クローズドループゲインを求める

全体のオープンループゲイン H$_{O}(s)$は、

各要素の積になります。

HMATH (1)

次に

「55.PLLを理解したい(近傍特性、フィードバック)その2」で、求めましたように

オープンループゲインと、クローズドループゲインの関係は(今の場合、負帰還ですから)

MATH

でしたから

(2)式に(1)式の関係を代入してやります。

MATH

ここで,ラグフィルタの伝達関数は

MATH MATHと置く)

なので、これを(3)式に代入すると

MATH

MATH

こうして、伝達関数H(s)が、求まりました。

MATH

「この伝達関数H(s)は、システムが2次の項を持ち、1つの極がVCOに、他方がローパスフィルタに起因している

ことを示している。」

(*Razavi p.280 「RFマイクロエレクトロニクス」黒田監訳 (8.11)改

$\qquad $

MATH

を、ループ利得と言うそうです。

具体的には、今までの計算より

MATH V/rad MATH rad/V

なので

ループ利得は

MATH

と求まりました。

VCOの周波数幅が、非常に狭いので、こんな値になります。

ここで、R=1.4K$\Omega \quad $C=0.1$\mu F\quad $と、私は、j実験の時、最初に設定いたしました。

この時、

MATH

MATH

と、求まります。

MATH

PLL6__40.gif
赤がC=0.1MATH

[ポールが2つありますので、変極点が2つ、あるようです。〕

(実は、いまだに、ポールの意味が、よく掴めていません。)

もし、R=1.4K$\Omega $、C=68$\mu F$なら

MATH

ですので

MATH


PLL6__46.gif
赤がC=0.1MATH

どうも、C=0.1$\mu F$の方が、わずかですが、減衰が大きいようです。

だとすると、C=0.1$\mu F$の方が、VCOの出力のスプリアスが、減るような気がするのですが

実際は、逆です。???

偏角のほうは、

C=0.1$\mu F$の場合

MATH

MATH
PLL6__52.gif

C=0.1$\mu F$の場合、

MATH, 解は: MATH

マイナス90度位に、収束するようです。

一方、C=68MATH

MATH

MATH
PLL6__59.gif

MATH, 解は: MATH

となり、マイナス172度位に、収束するようです。

どうも、よく解らんですが...

次回、PLL入門の最終回は、ダンピングファクタ、系の自然周波数(natural frequency)で、みて見たいと思います。

H15.04.21

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