サンプリング定理の本当の姿とは?

尾硲OMという方より、ショッキングなメールを頂きました。

 

「 さて、貴殿のHPを拝見させて頂き、少し問題点をみつけました。

信号周波数の倍以下のサンプリング周波数では、元の信号を復元出来ないとありますが、

これは間違いです 。」

 

   ガーン!!!

 

 

何度か、私との、メールのやりとりが、ありましたが

結論を、先に引用させて頂きます。

 

「一般に、実際のサンプリング・パルスは次式で表されるはずです。

フーリエ展開すれば

 

Sp=a+an・sin(N・ω1・t+φn)

 

 

のようになります。

これと原信号b・sin(ω2・t)との積が、サンプリングされた出力ですから

 

OUT=b・sin(ω2・t)(a+an・sin(N・ω1・t+φn))

 

と、なり

a・b・sin(ω2・t)項は、原信号そのものの成分に他なりません。

サンプリング周波数に依存しません

ただし、ちょうどサンプリング周波数が原信号周波数の2倍のとき、

サンプリング・パルスの高調波との積が干渉する ことになります。

ご存知のように、積は和と差の成分に分解出来るからです。

それでは、一般に原信号に0Hzから周波数成分をもっていたとしたら

まさに、原信号が含む最大周波数の2倍以下のサンプリング周波数では、いたるところで干渉をうけてしまいます。

これが、サンプリング定理の本当の意味 です 。

故に、原信号を抽出出来ないということになります。

 

それでは、原信号の周波数成分が0Hzからではなく、もっと高い周波数から存在していたらどうでしょう。

場合によっては、低いサンプリング周波数でも干渉しません。

出来る場合もあります。また、出来ない場合もあります。

出来るとしたら、サンプリング周波数の範囲は、どこからどこまでなのかを、吟味する必要があります。

原信号の最大周波数と、帯域幅の比で決まる、と思います。

その極限が、サイン波のサンプリングという訳です。...」

 

*** 強調した所は、私が、勝手に行ったものです。 ***

 

サンプリングする為の、インパルス列の方を、フーリエ級数展開する!

私は、あっさり、納得できました。(一晩、必要でしたが...)

 

以上が、結論です。

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以下は、最初に頂いたメールから抜粋しました。 理解の助けになると、思いますので...

 

「HPでは、サイン波を対象にしていますので、スペクトルに広がりはありません。

ちょうど、倍の周波数でサンプリングした時のみ干渉が起きるだけです。

4.5KHzの原信号を、8KHzでサンプリングした場合でもやはり、4.5KHzの成分は存在します。

適当なフィルタを入れれば、抽出できるはずです。ただし信号は、小さくなるのが普通です。

 

サンプリング定理の意味するところ は

原信号のスペクトルに広がりがある場合(正確には0Hzから成分を含んでいる場合) を、さしています。

シングルトーンや、帯域が限られている場合には、よく吟味する必要があります。

当方のSSB発生器は、まさにこのことを逆に利用しています。

 

サンプリング定理は、実によく誤解されています。

大学の先生方の著書にも、上記のことが、明確に説明されていないのが多いものです。

これには、本当にまいります。

 

何かの一つ覚えのように、とにかく、原信号の倍以上のサンプリング周波数でなければならないと

信じこんでいる方が多く 、話しが通じません。

...前田さん(*私の事)のように、勉強し始めの方には、是非とも誤解されたくなく、余計な事をいいました。」

 

 

「*Steven氏の書籍さっと読んでみました。サンプリング定理については

やはり、サイン波を例にとって説明されているようですね。

サンプリング周波数が低いと、低い周波数に変換されてしまうというような事だと思います。

私に言わせれば、それがどうかしたかと言いたくなります。

サンプリング周波数が高ければ、高い周波数成分のみが、元信号成分に畳重しているに過ぎず

本質的相違はありません。

サンプリング周波数が低い場合でも、やはり元信号成分は存在します。

そもそも、サンプリング周波数が、2倍寸前まで元信号が存在していて

2倍以下になったとたんに消えうせたらこれはマジックです。

すばらしいフィルタの出来上がりです。

図解ができれば、簡単な事なのですが。

そう、実に簡単なことなのです。

 

解説書で、シングルトーンばかりを例にとった説明には、うんざりです。

これを信じこんでしまった学生さん達は、一種の狂信者となり、もう手のつけようがありません。」

 

*The Scientist and Engineer's Guide to Digital Signal Processing by Steven W. Smith, Ph.D chapter 3.

 

「...外国書のほうが解り易い面も確かにあるように思われます。しかし、単純な問題ではないように思われます.

何よりも問題は、数式を見抜く目を養うことではないかと思います。...」

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以下は、私の、ほんまに拙い、「サンプリング定理を理解するために」考えた事です。

今まで、学習したことの理解度を見るために、そして

サンプリング定理が、何であるのか?を見るために......

シングルトーン4.5Hzを、8Hzでサンプリングしてみます。

サンプリング点$x_{n}$

$\qquad $

MATH

から、求める。


dsp12__6.gif

MATH

$\vspace{1pt}$

..

$\vspace{1pt}$

次に、このシングルトーンを−$\infty $から+$\infty \quad $まで、周期的であると、仮定して basis functionsとのcorrelationである ,DFTを行う。

$\vspace{1pt}$[INTRODUCTORY DIGITAL SIGNAL PROCESSING Paul A.Lynn Wolfgang Fuerst p.67の公式から(3.1)、(3.2)を抜粋]

 

MATH(3.1)

 

MATH

MATH

$\vspace{1pt}$

そして、ここから、再び 元のサンプリング波形($x_{n}$)の復元、 $y_{n}$ を、求めてみます。

$\quad $

MATH(3.2)

$\vspace{1pt}$もし、$\NEG{y}_{n}$が、$x_{n}\quad $と、一致すれば、正しくサンプリングされたと、解釈される。

$\vspace{1pt}$

MATHMATH

dsp12__29.gif
グレーが元の連続な4.5Hz、緑が、$x_{n}$、そして赤の破線が、復元した$y_{n}$

2周期目は、違いがあるが、1周期目は、$x_{n}$$y_{n}$は、完全に一致している。!

8Hzでサンプリングされた、4.5Hzは、1周期目は、完全に復元されています。

2周期目は、数値は同じですが、符号が逆です。

この、1周期目、2周期目を1つの単位として、以降、この単位で繰り返します。

ですので、2周期目の符号を逆にしてやれば、

復元したサンプリング点($y_{n}$)は、元のサンプリング点($x_{n}$)と、完全に、一致します。

 

「4.5KHzの原信号を8KHzでサンプリングした場合でも

やはり4.5KHzの成分は存在します。」(尾硲OM)

 

これは、MATHを求めると言う、意味ではないと、思います。

(8Hzのbasis functions に、4.5Hzは、ないから)

4.5Hzのシングルトーンを、8Hzでサンプリングすると、

DFTの結果は、4.5Hzをbasis funtionsで展開した係数$a_{k}$が存在するばかりではなく、

逆DFTしても、1周期目は、正しく、元のサンプル点と一致している!!!

$\vspace{1pt}\quad $

    この、1周期目と、2周期目で符号が変わって、元信号が、正確に再現できない事に関しましては、

    尾硲OMに解決して頂きました。

$\quad \quad $

$\qquad $「4.5Hzを8Hzでサンプリングした場合、

$\qquad $サンプリング数8では、4.プラス0.5周期分となってしまいます。

$\qquad $サンプリングされる側(この場合は4.5Hz)は、整数周期分でなければなりません。

$\qquad $よって、サンプル数を16まで増やせば9周期分となりOKです。

$\qquad $4.5周期分であったために、プラスマイナスが変わってしまったのです。」(尾硲OM)

$\quad \quad \ $

$\quad \quad $うーん、そうやったんか....成る程です。何度も、ありがとうございます。m(_ _)m

確認しておきましょう。

「4.5Hzを8Hzでサンプリングする」 「9Hzを16Hzでサンプリングする」

MATH

     MATH

     MATH

$\vspace{1pt}$元のサンプリング点$x_{n}$

MATH

MATH

MATH

MATH

MATH

MATH

MATH

$\vspace{1pt}$復元したサンプリング点y$_{n}$

MATH

MATH

MATH

MATH

MATH

MATH(計算結果は、丸めずに、そのまま掲載しました。)

$\quad $

見事に一致しました。

再度御礼申し上げます。

 

更に、5Hzの元信号を、8Hzでサンプリングしてみました。

サンプリング点$x_{n}$

$\qquad $

MATH

    から、求める。

 

$\vspace{1pt}$周波数 0,1,2,3,4,5,6,7Hzの各成分

 

MATH

MATH

 

復元したサンプリング点

MATH

MATH

MATH

MATH

MATH

元のサンプリング点

MATH

MATH

MATH

MATH

$\vspace{1pt}$

この場合は、復元点$\quad y_{k}\quad $と、もとのサンプリング点$\quad x_{k}$ は 完全に一致いたしました。

 

 赤は5Hzを8Hzでサンプリング、緑は5Hzを16Hzでサンプリングし

振幅の分布を見たものです。

(スペクトルに、広がりは、ありませんが、見やすいので、このように、線で結びました。)

 

うまく、表現できないのですが、

もし、$\NEG{y}_{n}$が、$x_{n}\quad $と、一致すれば、正しくサンプリングされたと、解釈される。」

(時間軸から、周波数軸に移し、再び時間軸に戻して、復元したサンプリング点が

元のサンプリング点と、一致すれば、正しくサンプリングされたことに、なりませんか?)

 

この観点から見ると、「5Hzは8Hzで正しくサンプリングされた」という事になります。

エイリアシングの3Hzの存在が問題となる(原信号にないものがある)とすれば、

どうして、5Hzを16Hzでサンプリングした時に、11Hzが存在する(原信号にない)ことが

問題にならないのでしょう?

 

どちらの場合も、離散化に伴う必然だと、思うのですが....

とにかく、原信号成分は、含まれていることが解りました。

 

まだまだ、疑問点がいっぱいです。

 

 

ディジタル信号処理を、調べ始めて、3ヶ月

真髄の一端に触れる事ができ、感激しております。

尾硲様には、心から、御礼申し上げます。

$\quad $

H15.07.07

 

$\qquad $ $\allowbreak $

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