伝送線路的トランスを用いたインピーダンス変換(1:4)

「トロイダルコア活用百科」p79に、「伝送線路的トランス」を用いた1:4のインピーダンス変換回路があります。

理屈がよく解らないので、取り合えず、例によってシミュレートしてみました。

1.シミュレート時の電流の方向について

シミュレート時の、電流の方向は、注意する必要があります。

試しに、2本の抵抗を、互いに逆向きに配置してみました。


imp__1.png


imp__2.png
青はL1の電流 赤はL2の電流

ご覧のように、抵抗に流れる電流の方向が逆になります。

NET LISTをみてみましょう。


imp__3.png

R2のノードが逆向きになっているからです。

従って、R2に流れる電流を正しく表示するには、グラフには、-I(R2)としなくてはなりません。

次に、インダクタンスで見てみましょう。


imp__4.png


imp__5.png

これも、電流の方向が逆です。(Lを入れると、電流は90度遅れるはずです。)

net listを見てみましょう。


imp__6.png

やっぱり、L1のノードの接続が逆になっていました。

ですから、Lは、ポッチが付いている向きが、アースに近いほうにすべきです。


imp__7.png

これで、「インダクタンスの電流は、電圧より90度遅れる」ということになります。(抵抗R1があるから、正確ではない)

2.1 伝送線路的トランスを用いたインピーダンス変換

伝送線路的トランスを、シミュレートして見ます。

(実は、この理屈が、よく解っていないので、シミュレートして見ることにしたのです。)


imp__8.png

MATH

R1の電圧Voutは、信号源の電圧Vinの2倍になっています。

(相互誘導の結合係数k=1。これがないと、0.2V位の電圧になってしまう)

R1の電流I(R1)は、信号源の電流II(V1)の半分1/2になっています。

(信号源から出て行く電流は、符号が逆のマイナスになっています。

能動デバイスでは、出て行く電流はマイナスになるようです。

NPNバイポーラTrのエミッタ電流もマイナスになっています。)

従って

信号源の抵抗を $\dfrac{V}{I}$ とすると(インピーダンスの定義は、電圧/電流)

負荷側では、

MATH

となり、

信号源のインピーダンスが、4倍に変換されました。

(理屈が、よう、わからないのですが...)

2.2 3dBハイブリッドのシミュレート


imp__14.png

先ほどの1:4インピーダンス変換器の結線が変わりました。

L2がアースされていたのが、R1に接続されました。

抵抗R2,R3が増えました。

MATH

ポート1,2の電流は、信号源の半分です。

電圧は、全て、信号源の元の半分になりました。

ですので

ポート1,2での電力は、同じで

MATH

となり、ロス無く伝達されて、半分ずつになります。

R1の100$\Omega $の抵抗の両端の電位(ポート1,2)が同じですから、R1には電流が流れず

電力の消費がありません。

次にポート1に信号源を繋ぎ、ポート2を開放します。


imp__20.png

MATH

電圧の関係

V(sumport)=$\dfrac{1}{2}$V(Port1)

V(port2)=0

電流の関係

信号源の電流(I(V1) = 負荷の電流(I(R2) = 2x(L1に流れる電流)

100$\Omega $に流れる電流 = I(L2) = MATH

電力の関係

信号源 =VI

負荷R2 = V(sumport) I(R2) = $\dfrac{1}{2}V$ $\times $ $I$ =$\dfrac{1}{2}VI$

半分(3dB)の電力が、負荷に供給された。

100$\Omega $の抵抗で消費される電力は

MATH

100$\Omega $の抵抗R1の両端の電圧は

Port1の電位 Port2の電位 = V =V

となることが注意です。(なんでか、よう、わからん...)

最後にポート2をショートしてみます。


imp__34.png

MATH

負荷の電圧(V(sumport)) = MATH 信号源電圧 =$\dfrac{1}{2}V$

負荷の電流(I(R2)) = 信号源の電流 = I

(アースされたL2からもMATHの電流が流入することに注意)

負荷の消費する電力 = MATH

100$\Omega $の抵抗で消費される電力 = MATH

と、なります。

いずれも、L1,L2に流れる電流の向きが、要注意です。

MATH

ネットリストも揚げておきます。

電流の時は、接続の向きに注意が必要

MATH

MATH

上記の定義をみると

Syntaxの

Lxxx n+n-

が正の方向だから、接続によっては、逆に流れるようにみえます。

ネットリストを見る必要があります。

3.実験の結果

アイソレーションの測定

MATH


imp__52.png

1~100MHzは、「トロイダルコア活用百科p.363の第6-32図と一致します。

1.3GHzまで、みてみました。


imp__53.png

次は、ポート1の反射を見てみます。


imp__54.png

sumportは、51$\Omega $を並列接続して、25$\Omega $にマッチさせています。


imp__57.png

SWRをみてみましょう。


imp__58.png

130MHzまででしたら、SWR$\leqq $1.4に収まります。


imp__60.png

参考 「トロイダルコア活用百科」p.79、p.360-364

H14.12.11

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