前回、PLLを使った10MHz標準発振器を試作しました。
斉藤OMのお陰を持ちまして、うまく動作しました。
ここでは、PLLを理解するための前哨戦として、用語を理解していきます。
ある発振器の波形を、スペアナで観測すると、上図のように見えました。
これは、スペアナの解像度が、今は9KHzのバンドパスフィルタを使っているからです。
もっと解像度の高い、100Hz、30Hz等のバンドパスフィルタを通すと、一本の線が垂直に立ったように見えるはずです。
理想の発振器は、線になったスペクトルを持ったものを言います。
右側が実際の発振器のスペクトルです。(絵が汚いので、すいません。)
「RF領域において、位相雑音は通常、周波数領域で扱われる。
で発振する理想的な正弦波発振器のスペクトルは インパルスで示されるのに対し、
現実的な発振器のスペクトルは搬送波周波数の両端に広がるスカート特性を持つ。」
と言うことだそうです。
(引用 「RFマイクロエレクトロニクス Behzad Razavi著 黒田監訳」p.236
数式が難しい本だけど、大きな視点から書かれていて、概略をつかみやすい。
「数式に負けるな !!! 」と、自分に言い聞かせる訳です。
訳本でありがたいし、原著より安価なのが、うれしい )
右側の現実の発振器において、赤い帯の周波数の幅を、今、仮に1KHzとすると、
この帯域内の雑音電力と、搬送波の電力の比でもって、位相雑音を定量化することができます。
この帯域(今は、1KHzと仮定)での雑音を、-70dBm、中心周波数からのオフセットを100KHz
搬送波の電力を、仮に-2dBmとすると、
1KHzの帯域で-70dBmですから
1Hz当たりに換算すると
-70dBm / 1000 = -70dBm ー 30dB =-100dB/Hz
(dBmの定義は10logX ですから、1/1000は-30dBm、1/100は-20dBm)
そして、搬送波は -2dBm の大きさなのですから
雑音は、搬送波と比較して
(-100dBm) - (-2dBm) =-98dB
の差があります。
この時、搬送波と比較しましたから
-98dBc/Hz
と、表現されます。(そうやったんか!!! 実は今まで知りませんでした。)
-98dBc/Hz @100KHzと表現されるか、どうかは解りません。
左側が試作した10MHz発振器です(200KHz span)
右側は、もっと、下のほうをみたものです。(100KHz span)
左側より、
搬送波は +20dBm
右側より 搬送波からのオフセット10KHzで
位相雑音は -90dBm/100Hz = -90dBm - 20dB =-110dBm/Hz
ですから
位相雑音は、搬送波との距離が
-110dBm −(+20dBm) = -130dBc/Hz @10KHz
となりました。
前回書きましたように、散々いじった試作機ですから、
途中から空中配線になってしまったのですが(つまり、作り始めた時、PLLのことを全く知らなかった訳です。)
まあまあの値でしょうか?
全て、10MHz高精度水晶発振器(¥300@秋月)の、お陰です。
(Qが高いと、位相雑音は少ない)
恥ずかしながら、空中配線の程度を、お見せします。
ジッタとは、時間軸での、波形のゆらぎと思われます。
全く動かないので、ジッタは、ないと思ってよろしいのでしょうか?
(VCOの出力を、HC00のNANDを、一つ通して無負荷で見たものです。)
とにかく、PLLの実力を実感しましたので、
もう少し、PLLを調べてみたいです。
H15.04.07
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