1石アンプの動作点等

増幅器の動作点は、どうやって決めるのでしょうか?

今回は、そこを探ります。

例によって、最も基本的な特性から、さぐります。

2SC18158を例に揚げます。

amp3__1.gif

東芝の2SC1815のデータシートを見ますと

Ic-Vc曲線が描かれていますが、範囲が手ごろでないので

シミュレートしてみましょう。

amp3__2.gif

amp3__3.gif

流す電流が、数ミリアンペアの範囲を取り出してみます。

それには、ベース電圧を、もっと下げてみると、よいです。

amp3__4.gif

amp3__5.gif

ここで、

もし、コレクタ-に1K$\Omega $の抵抗を入れると

その負荷線は、どうなるでしょう?

amp3__7.gif

amp3__8.gif

赤線で引いたものが負荷線です。

Ic=0の時は、Vc=10V(これはVcc=10Vそのもの、電圧降下がないから)

Ic=3mAの時は

負荷1K$\Omega $に3mAの電流が流れるのですから

コレクタの電圧は降下して

MATH

と、なります。

ですから、負荷線は、10V、0mAの点と、7V,3mAの点を結んで

延長すれば、よいのです。

では、コレクタ負荷を5K$\Omega $にすると、どんな負荷線が引けるでしょうか?

amp3__12.gif

先ほどと同じです。

今度も、0mAの時 Vc=10Vです。

Ic=1.2mAの時

負荷での電圧降下は

MATH

ですから

1.2mA,4Vの点と、0mA,10Vを結べば、よいのです。

話をRL=1K$\Omega $に戻し、動作点を決定しましょう。

Vce=10-Ic x RL

で表された負荷線で、

Vce=0 となるのは

Ic=MATH

ですから、以下のようになります。

amp3__16.gif

Icが0mAから10mAまで、

Vc=0Vから10Vまで変化しますから

最大出力を取り出すには
Ic=5mA、Vc=5V
が、最適です。(A級動作で、歪がないようにすると)

amp3__17.gif

この時、

出力電圧は、動作点を中心に、ピークで$\pm 5V$振れる訳ですから

このアンプの最大出力は、

MATH

と、言うことになります。

実際には

コレクタ電流が小さい領域は、Ic-Vb曲線が詰まっていますから(波形が歪む)

もう少し狭い範囲を、とってやるといいです。

入力が大きくなると、電流、電圧のクリッピングが生じます。

amp3__20.gif

動作点にするVbは、グラフから0.7V位。

限界は、Vb=0.72V位ですから、

(VBE sat ベースエミッタ間飽和電圧は0.02V位。この範囲は避けるが

今の場合、小さいので無視する)

入力として、+0.020V(+20mV)ピーク以上ものが入ってくると、Ic=10mA以上になりません(クリップする。)

20mVの入力の変化で、Vcは5V変化していますから

電圧増幅率は

MATH

負荷が1k$\Omega $の時の最大出力は

MATH

に、なります。

次に、

負荷が1k$\Omega $として

エミッタに繋ぐ抵抗値を決めましょう。

これを入れる理由は、電流帰還を使って、動作点が変動しないようにする為です。

今、Ic=5mAを動作点として、決めましたから

エミッタ電圧を1Vと仮定すると(1Vあれば、安定するようです、略)

エミッタに挿入する抵抗Reは

MATH

と、計算されます。

ベースの電位は、

これより0.7V高い電圧に設定すると、

Ic=5mA

に、なるはずです。

amp3__26.gif

シミュレートで、Operating Point(動作点) を調べてみましたが

大体、計算通りでした。

amp3__27.gif

Ic-Vcの特性上の負荷線は、エミッタ抵抗を入れた為に

変わってくる事に、ご注意下さい...

負荷線の傾きは

1kMATH

に、変わり、負荷線が違ってきます。

(最適な動作点のIc=MATH

MATH

amp3__31.gif

今までの考察では

直流の負荷と、交流の負荷が同じです。

出力を取り出す為に、Cを通して負荷抵抗を繋いだり

エミッタをCで接地すると、

直流負荷と交流負荷が違ってきます。

次回は、これを題材とします。

H15.01.14

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