負帰還が歪を改善するのは何故?

1.直列直列帰還と並列並列帰還の場合

直流の帰還の場合で、調べました。

負荷線を引いてみました。

直列直列帰還

MATH

並列並列帰還

MATH

見比べて見るために、グラフだけ、並べてみます。

グラフのX軸は、Vceのつもりです。

直列直列帰還                                                                                並列並列帰還

MATH

$\vspace{1pt}$

何れの場合も、無帰還時に比べて、直線の傾きが、緩やかになっています。

今の場合、これが、歪が改善される理由です。

「ひずみを小さくする一つの方法は...エミッタ回路に抵抗Reを挿入することである。これにより

入力電圧と、エミッタ電流のとの関係を表わす曲線の傾斜が穏やかになり、ひずみが改善される...」

(「増幅回路の考え方改定2版砂沢学先生オーム社p.79-80)

砂沢先生は、第2次高調波ひずみ率D2について、説明なさって居られます。興味ある方は、上書をご覧になってください。

直列直列帰還

MATH

直列直列帰還の場合、

無帰還に比べて、帰還量が多いほど、取り出せる出力電圧の範囲が、狭くなる事がわかります。

これは間違いでした。帰還抵抗の値が大きいほど(つまり帰還量が少ないほど)、取り出せる出力電圧の範囲が狭くなる。

並列並列帰還

MATH

$\vspace{1pt}$

並列並列帰還の場合は、先ほど(直列直列帰還)と比べて

逆に、出力電圧の範囲は、広くとれる事がわかります。

つまり、帰還量が少ないほど、出力電圧の範囲が広くとれる。

直列直列と逆に、なります。

これは、収穫でした、全く知りませんでした。

そしたら、当然、並列並列帰還を使うべきなのに、普通は、直列直列帰還を使う回路を、よく見かけます。

これは、多分、バイアス回路の安定性が、直列直列の方が、上手なのが理由だ、と言う気がします。

バイアスの安定指数についても、砂川先生は、詳しく解説されていますよ...

2.どれ位、歪が改善されるのか?

数式ではなく、一例しか、上げることができませんが、やはり、大きな効果があるようです。

MATH

出力の大きさが同じになるように、入力電圧の大きさを調整しました。

又、Q1、Q2共、VBE=0.6Vになるように設定しています。

MATH

MATH

 

Direct Newton iteration for .op point succeeded.

Fourier components of V(out)(帰還有り)

DC component:9.43648e-005

HarmonicFrequencyFourier NormalizedPhase Normalized

Number [Hz] ComponentComponent[degree]Phase [deg]

1 1.000e+034.875e-021.000e+00-179.96ー0.00ー

2 2.000e+036.392e-071.311e-0585.31ー265.27ー

3 3.000e+031.319e-072.705e-06-82.30ー97.66ー

4 4.000e+031.314e-072.695e-06-83.65ー96.31ー

5 5.000e+031.311e-072.689e-06-84.87ー95.09ー

6 6.000e+031.310e-072.686e-06-85.70ー94.26ー

7 7.000e+031.309e-072.684e-06-86.27ー93.69ー

8 8.000e+031.308e-072.683e-06-86.72ー93.24ー

9 9.000e+031.307e-072.681e-06-87.07ー92.88ー

Total Harmonic Distortion: 0.001492%

Fourier components of V(out2)(帰還無し)

DC component:0.000113227

HarmonicFrequencyFourier NormalizedPhase Normalized

Number [Hz] ComponentComponent[degree]Phase [deg]

1 1.000e+034.941e-021.000e+00-179.78ー0.00ー

2 2.000e+031.750e-043.541e-0390.30ー270.09ー

3 3.000e+036.795e-071.375e-050.34ー180.12ー

4 4.000e+032.263e-074.580e-06-0.12ー179.66ー

5 5.000e+031.810e-073.664e-060.08ー179.86ー

6 6.000e+031.508e-073.053e-060.14ー179.93ー

7 7.000e+031.293e-072.618e-060.20ー179.98ー

8 8.000e+031.131e-072.290e-060.25ー180.03ー

9 9.000e+031.005e-072.035e-060.29ー180.07ー

Total Harmonic Distortion: 0.354142%

歪は、かなりの開きが、ありますね。

それから、出力と、ノイズフロアの差に、ご注意!

両者(帰還有り、と、帰還無し)で、この差の違いが、見られませんね。

基本シグナルと雑音の比は、帰還有りと、帰還無しで、差がない、のでは?

 

(実は、「Analysis and Design of Analog Integrated Circuits  4th ed.    GRAY HURST LEWIS MEYER    JOHNWILLEY&SONS」 を、ちらっと見ている。

 しかし、難しすぎて、殆ど解らないです、えらい本、買うてしもた...)

 

3.わからないながらも、わかることは...

 

「負帰還をかけるということは、回路内の増幅器の利得を落としているのではなく、回路全体の利得が小さくなるように

 増幅回路の入力電圧または入力電流を見かけ上小さくしていると考えたほうがよいでしょう...」

 

「...つまり、負帰還増幅回路とは、出力電圧または電流を入力部にもどすことで、自分自身の入力電圧または電流を

 見かけ上小さくして、回路全体の利得をコントロールする...」

(「定本 トランジスタ回路の設計 鈴木雅臣先生 CQ出版 p.203」)

 

「...Tr1もきちんと入力電圧を利得倍していると考えたほうが自然です...」

(「同書 p.202」)

 

信号対雑音比については

 

「 Thus,for the case of  ideal  feedback,the equivalent input noise generators can be moved unchanged outside the feedback loop and

    the feedback has no effect on the circuit noise performance.Since the feedback reduces the circuit gain,the output noise is reduced

   by the feedback,but desired signals are reduced by the same amount and the signal-to-noise ratio will be unchanged.

    The above result is easily shown for all four possible feedback configurations described in Chapter 8.」

 

(Analysis and Design of Analog Integrated Circuits 4th ed. Gray Hurst Lewis Meyer JOHN WILLY & SONS,INC  p.777 」)

 

引用ばっかりで、恐縮です。

なんせ、わからん事ばっかりで... m(__)m

 

H.16.12.20