狭帯域BPFに入る前に

前準備

1.1正規化(normalize)と、実際の回路を構成する為の、逆正規化(denormalize)について

以前(28.実際にButterworth特性のローパスフィルタを計算する)に、逆正規化して、実際の回路のL.、Cの値を求めました。

ここで、

回路要素のL,Cに、qというものを導入すると、もっと見通しがよくなります。

1.2 qの定義

Lで考えると

直列の場合

MATH

MATH

同じ定義を、正規化された($\omega =!\U{ff09} $回路について考えて


filter_11__5.png

回路の最初の値L=$g_{1}$に、信号源の内部抵抗$R_{s}\quad $が直列になっている場合

MATH

という値を定義します。

これは、コイルに抵抗Rが直列に入ったQの定義、そのものです。

上記の回路の場合、信号源の内部抵抗 MATHですから

MATH

しかし、必ずしも、負荷、信号源の内部抵抗は1ではない。

並列の場合

$R=Q\omega L$

(このQの値は、実は近似式です。Introduction to Radio Frequency Design p.55 eq.2.6.5)


filter_11__12.png

MATH

$\vspace{1pt}$よって

MATH

これも、コイルに抵抗Rが並列に入ったQの定義、そのものです。(直列の逆)

Cで考えると

直列の場合

MATH

並列の場合

MATH

MATH

MATH

(1),(2),(3),(4)式を、表にまとめると

MATH

MATH

リアクタンスで書くと、もっと解りやすい。

MATH

1.3 逆正規化(denormalize)して、実際の回路の、各素子の値を求める

逆正規化する時、上記の表の値 $q$が、変化しないように、L,Cの値を変化させます。

3rd order LowPass Butterworthの正規化された$g_{1}$は、今は、Lで1.000Hです。

もし、信号源抵抗R= $50\Omega $で、カットオフ周波数が15MHzに逆正規化 すると

逆正規化は、全てカットオフ周波数で行うことに注意

上記の表1の$q$が変化しないように、Lの値を決めます。

今、Lは信号源抵抗と直列 ですから

MATH(正規化されている側)

$\vspace{1pt}$この値$q_{1}$が変化しないようにLの値を求めると

MATH

MATH

2番目の素子$g_{2}$ は、これと同様に考えます。


filter_11__33.png

$\vspace{1pt}$赤線を引いた左側の合成インピーダンスに対して

$g_{2}$は、並列で、今の場合Cですから

表1のCで並列のqを参照します。

MATH (正規化されている側)

この値が変わらないように、Cの値を決めてやります。

MATH

MATH

$g_{3}$は、Lであって、負荷抵抗との関係で決めます。

負荷抵抗と直列ですから

MATH(正規化されている側)

だから

MATH

MATH


filter_11__43.png

2.normalized coupling coefficient(正規化結合係数?)

MATH

今、1対の隣り合ったCとLの関係を調べるために

g1と負荷抵抗を切り取った回路を調べる。


filter_11__46.png

この時の各素子に流れる電流の、周波数による変化です。


filter_11__47.png

赤(電源の電流)がディップしている所が、共振点(MATH)です。

縦の白い破線が、normalizeされたMATHの線です。

normalizeされた時MATHの、各素子の電流の関係は


filter_11__51.png

赤Isが信号源から流れる電流ですが

Cに流れる電流Ig2より、小さな値で、位相差があるために、こうなっています。

Ig2とIg3をベクトル的に合成すれば、辻褄は合っています。

次に、この回路で、トランジェント解析します。


filter_11__52.png

ここから、

Lに流れる電流Ig3は約0.692A(peak)

Cにかかる電圧Vg2は約0.703V(peak)

と、読み取れます。

そして、

Lに蓄えられるエネルギーは $\dfrac{1}{2}LI^{2}$

Cに蓄えられるエネルギーは$\dfrac{1}{2}CV^{2}$

ですので、その比

MATH

となります。

実は、これが

$\dfrac{1}{LC}$と一致するのです。

「私の説明では苦しいので、参照ください Introduction to Radio Frequency Design p.85」

そして、$\omega _{r}$をこの回路の、normalizeされた共振周波数とすると

MATH

ですから

LとCが蓄えるエネルギーの比は、共振周波数$\omega _{r}$の2乗と一致します。

そして、この$\dfrac{1}{LC}$のルートをとったものをnormalized coupling coefficient と言います。

(と言う事は、normalizeされた、2つの素子の共振周波数$\omega _{r}$そのもの)

結局、Lに蓄えられるエネルギーは

$K_{2,3}$倍される訳ですから、今の場合MATH

Cに蓄えられるエネルギーのMATH倍と計算できます。


filter_11__65.png

上記の3pole Lowpass Butterworthを例にとると

MATH

MATH

ですから

Cに蓄えられるエネルギーは

$\qquad L_{1}$に蓄えられるエネルギーの MATH

$L_{2}$に宅割られるエネルギーは

Cに蓄えられるエネルギーの MATH

これは、元($L_{1}$)から、いけば

$L_{1}$に蓄えられるエネルギーのMATH

ですので、全体の比は

MATH

この順番にロスする訳ではないのですが、比率がこうなるという訳です。

回路のロスは、もっぱらコイル、コンデンサーの内部抵抗等のせいだと、思います。

一般に、n番目とn+1番目の素子の間には,次の関係が成り立つそうです...

MATH

狭帯域のBPFの時に、カップリングコンデンサーの値を決定します。

しかし、まだ、実感として、しっかりと解ったわけではありません。

お疲れ様でした...

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