入力が小信号の時のトランジスタモデルについて

 

エミッタ電流とベース電圧の関係(small-signal modeling)

 

この関係はEbers-Mollの関係式 Ie=Ies*[exp(qV/kT)-1]で表されることがわかりました。

今、ベースの入力シグナルが小さい時、ベース電圧(バイアス電圧+シグナル電圧)によるエミッタ電流の変化は、バイアス点の周囲でテーラー展開した時の、1次(線形linear)までをとれば、よい事になります。

ですから、上の式は、まず近似して Ie=Ies*exp(qV/kT) とし、ここでテーラー展開すると(注 Vb=Vbias,Vs=Vsignalと略します)

Ie=Ies*[exp(qVb/kT) + 1/1! *(q/kT)*exp(qVb/kT)*Vs +1/2!*(q/kT)^2*exp(qVb/kT)*Vs^2+.....

と展開されますから、常数の第1項、線形の第2項のみをとれば

Ie=Ies*exp(qVb/kT) +Ies*(q/kT)*exp(qVb/kT) *Vs

だけが残ります。ここで、

常数 Ies*exp(qVb/kT) = Io とおくと、

上式は

Ie = Io  + Io*(q/kT) * Vs

となり、

gm = Io*(q/kT) とおくと (small-signal transconductance といいます)

Ie = Io + gm * Vs

という関係になります。

Ioを上式のように決めたのですから、Ioの値はベースのバイアス電圧 Vbが与えられた時に流れる、エミッタのバイアス電流です。

gmも上式で定義されたのですから、gmの値はエミッタのバイアス電流によって決まる値です。

ですから、シグナルだけに注目すると、シグナルによるエミッタ電流の変化をIsとおくと

Is = gm *Vs

の関係があります。

これで、入力のシグナル電圧と、エミッタ電流の変化分の関係が解りました。

電流でみてみると...

 

コレクタ電流Icとベース電流Ibの関係は

Ic = β* Ib

の関係があります。

この関係は線形(linear)です。正比例関係にありますね。

それから、エミッタ電流Ieと、コレクタ電流Ic、ベース電流Ibの間には、次の関係があります。

Ie = Ic + Ib

ベース電流Ibとベース電圧Vbの関係は

 

Ie = Ic + Ib =β*Ib + Ib =( 1+β)*Ib

シグナルだけに注目します。(シグナルのベース電圧Vs、ベース電流Ibです) 

Is= gm *Vs を代入すると

Ie = gm *Vs ですから

gm*Vs =(1+β)*Ib

の関係があります。

そんで 変形すると 入力インピーダンスRinは

Rin = Vs/Ib = (1+β)/gm = (1+β)*re

と求まります。re= 1/gmでエミッタ抵抗(emitter resistance)といいます。

Ftは電流のゲインが1になる周波数)

gmの値がエミッタのバイアス電流で決まる値でしたから

reもエミッタのバイアス電流で決まる値です。

 

で、扱う周波数が、TrのFtに比べ、十分低い時

等価回路は次のようになります。