増幅回路を、1から書きます。まず電源。これをnpnTrのコレクタに繋ぎます。
この時点で、Trのベース、エミッタは、(グラウンドに対し)共にある電位を持ちます。
私は、この事に気づかなかったので、プッシュプル増幅回路が、長い間、理解できなかった。(後述)
エミッタをGNDに接続する。この時点でも、ベースは、ある電位を持ちます。
その理由なんですが、CB間、BE間には、Trによって決まった容量Cが存在しますし、
(この容量も、かける電圧で違ってくる)
容量Cがあれば、一方が宙ぶらりでも、その宙ぶらりの部分も電位を持っています。
よく解らないのですが、ある電位を持っています。
Simulateまたは実測なされてください
先ず、C級増幅です。
その為に、ベースをグランドに接地します。そのまま接地したら、後から注入する交流が
グランドに落ちて、交流電圧がゼロになってしまいますから、抵抗(値は適当に..)を通して
接地します。
これでベースの電位はゼロになります。
抵抗を通しても、ベースの電位はゼロになります。(電流が流れていないから、電位の低下はないです。)
後ほど、交流電圧を印加しますが、この時、ベースに繋いだ抵抗を通して、グランドに交流が流れますが
その量はわずかのはずです
。
理由は、エミッタから出力を取り出すとすると、エミッタに抵抗を繋ぎますが、これを負荷とすると
BE間がONの時、負荷とベースに繋いだ抵抗とを比較すると、負荷の方が遥かに抵抗値が低いから
(そうなるように、ベースに繋ぐ抵抗を設定する。又、今の場合、BE間のON抵抗はゼロと考えてもよい)
交流源の電流は、大半がエミッタに繋いだ負荷抵抗に流れると思います。
ですからベース・アース間の抵抗に流れる電流はわずかのはずです。
この場合、ベース電位は、負荷に流れる電流によって作られるのか?
ごめんなさい。ここんとこ、よく解ってないです。
BE間がOFFの時(少なくとも0.6v以下)、注入された交流電圧は、そのまま、ベース電位になります。
当然、ベース・グランド間に電流が流れますが、それが、ベースに電位を与えるのだと思います。
ところで、npnTrの一般的Ic-Vbe特性は下図です。(VBEと書くべきだが、このほうが
見やすいので)
今、ベース電位はゼロですから、上図の原点にいるわけですね。
ここに、交流源を、Cを通してつないでみます。(以降は、Circuit Viewerという回路Simulatorを使います。)
今、仮に、交流源は1KHz,2Vp-pとします。
結果は、みなさん、よくご存知の通りです。
エミッタの1KΩの抵抗の両端に、オシロのプローブをあてて測定しています。
C級ですから、1KHz基本波以外に沢山の波形が観測されます。
2KHz,3KHzの高調波も基本波と、ほぼ同レベルですね。
交流源の電圧はプラス側で、最高1Vですから、この時
BE間がONになるときが存在し、これが、脈流となってオシロで観測されるのですね。
基本波以外の波形が出てくるのだから、C級動作はmixerになるか?
mixされるけれども、使い物になりません。
波形が多すぎて、目的とする波形が取り出せません。
下図は1KHz,1Vp-pと3.5KHz、1Vp-pをC級動作でmixした結果です。
「アホな奴だ」と、お叱りを受けそうです。
次はB級です。
B級は、上のグラフでは、Vbeが、ほぼ、0.53V位の所(25度C)に動作点を持ってくるのでしたね。
そのために、ベースの電圧をグランドに対して、0.53Vにします。
これは、抵抗にて、電源から分圧しました。
Circuit Viewerのデジタルテスタで、Vbeを測り、0.53V付近に持ってきました。
分圧に使った抵抗比は、10KΩ:1kΩになりました。
プッシュプルではありませんから、交流源の半分の波形が観測されますが
高調波も、まだまだ多いですね。出力は増えました。
念のため、プッシュプルB級動作の結果です。(プッシュプルの回路については、後日に書きます)
交流源1KHz,20mVp-p
交流源1KHz,500mVp-p(入力の電圧を上げてみました)
同じ動作点のB級でも、入力が過大だと、ご覧のように歪が増えてきます。
次は、A級です。
Vbe=0.65Vで、A級動作します。(25度C)
きれいなA級動作させる為に、交流源の電圧を20mVp-pにしてみました。
(2Vp-pでは、A級動作できない部分が出てくるから)
これで、きれいな波形がでましたね。
若干、(基本波に対し-70dB位)の2次高調波も観測されますが、これは、Ic-Vbeの特性が
完全な直線でないからだと思います。
しかし、この非直線部分が激しい所を動作点(0.53V〜0.6V位)に選ぶと、mixer及び検波の
働きをしてくれるのですよね。
なお、今回は、エミッタに挿入した抵抗の所で測定していますから、増幅度は1です。
そのため、コレクタに抵抗を入れていません。
最後にプッッシュプルの件です。
ベースにバイアスを与える前の状態です。
ご覧のように、npnQ1及び、pnpQ2は、ある電位を(今は2.999V)持っています。
次に、ベースに直流バイアスをかけます。
ベースに電源電圧の1/2の3Vをかけても、、この電位は変っていません。
今、ベースの電位は3V、Q1のエミッタの電位は2.999Vですから
Q1のVbe=0.001Vで、OFFです。Q2も然り。
この状態で、ベースに交流源1Vp-pをかけたとしたら、
ベース電位が上がり、Q1、Q2のエミッタは一定なのですから
Vbe > 0.6V になる時があり、Q1,Q2共にONになる時間帯が存在することになります。
あとは、プッシュプルのQ1,Q2のベースのバイアスを適当にとれば
動作するはずですね。
これで、あなたは、プッシュプル回路を、ご自分で書けるようになります。
このように、回路シミュレータを使うと、便利ですね。
測定器がないと、お嘆きのあなた、これを使わない手はありません。
なお、記事中で使用したシミュレータは株式会社マイクロネットさまの製品
サーキットビューアーの、お試し版で、version2.0です。(今のversionは2.6です。)
この、お試し版はNIFTY,Yahoo等で無料でダウンロードできます。
是非、お試しください。
サーキットビューアーのホームページは
です。
参考:
定本トランジスタ回路の設計 鈴木雅臣著
回路シミュレータで学ぶ電子回路入門 久保田 一/大石 邦夫 共著